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破廉恥な/令和三年四月十八日 [由無し事]

以前、下着の商標名に「KIMONO」が使われそうになった時の大騒動は収まったけど、今回の帯踏み騒動は未だ収まりそうにないですねぇ。
不謹慎かもしれないけど、CMの内容云々よりむしろ、私は別の方向で感動を覚えてしまいましたよ。
こんな洋装一辺倒の時代にも、着物愛を抱いている日本人がまだこんなに大勢いたなんて…。

ていうか、かのCMの内容、こんなはしたない事して印象悪くなるに決まってるのに大丈夫なの?!と不安になりましたよ。まぁ大丈夫じゃなかったわけですけど。
まず畳の上に土足で上がるのって、災害から緊急避難する時とか、戦で闘う兵士とか、討ち入りする浪士とか、そして押し込み強盗、打ち壊し…と、かなり尋常じゃない事態ですよね。
そして帯の上を踏んで歩くのに至っては、夜這い、盗人、必殺橋掛人(※厳密には着物の反物)…と、これもまた世間に顔向けできない行いばかりだし。

着物って衣服であると同時に災厄から身を守る神聖な呪具でもありますものね。糸からして注連縄の最小単位みたいなものだし。
だからなるべく切らない、無駄にしない、縫い代や丈の余りも縫い込んで、解いて縫い戻せば元の反物に復活!!
これは自論ですけど、災厄から身を守るようにふわりと体を覆うのが正解だから、日本の着物はガバガバに広く長く変化していったんじゃないかと勝手に思ってます。

昔、うちに妖怪辞典だか何とかいう子供向けの本がありました。
垢なめだの小豆洗いだの二口女だの、身の毛もよだつような恐ろしい妖怪の絵が沢山載っていたんですけど、その中に一つだけ、優しげな姿の妖怪が載っていたんです。
「着物の精」といって、衣桁に掛けられた綺麗な着物の袖口から、小さな細い手が伸びている絵でした。その妖怪の解説には、長く大切にされた着物には魂がこもって恩返しをしてくれる…とあって。
ちょっと検索して調べてみたら、「小袖の手」という妖怪の絵がそっくりでびっくりしたんですけど、そっちは恨みをのんで死んだ女の着物に怨念がこもった物だという事なので、また別物なんでしょう。
どちらにせよ、着物には情念がこもるという事には変わりないですものね。
ちなみに検索していて「蛇帯」という妖怪がいる事も知りましたよ。
帯を枕の代わりにして寝ると、蛇のようにクネクネと化けて出てくるんですって。
枕代わりにしただけでその仕打ちって…、尻に敷いたり靴で踏みつけたりなんかしたらどうなるか(笑)。

さて、戦死した祖父のスクラップブックから、昭和初期の着物の絵の切り抜きをご覧下さい。
いずれも少女雑誌の挿絵のようです。当時祖父は十九歳前後だったはずですが、どうやってこれを手に入れてたのかと想像するとちょっと楽しいです。

須藤重
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この頃の絵や映像で、お太鼓の山がとんがって蛤みたいな形になってるのをちょいちょい見かけるけど、当時の流行りだったんでしょうか。

松本かつぢ
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女学生の袴姿には編み上げブーツが定番のように思われてるけど、実際は脱ぎ履きが不便なのでこの頃にはパンプスになってたみたいですね。

高畠華宵
takabatakekashou.jpg
これも、マントと襟巻きで隠れて判り難いけど、袴姿にパンプスの女学生。
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